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ジェット [アンティーク]

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今日はお彼岸なのでというわけではありませんが、喪の正装として認められるジュエリー(モーニングジュエリー)、ジェットを取り上げたいと思います。

モーニングといってもおはようのMorningではありません。哀悼する、喪に服すのMourningです。ジェットはとてもそうは見えませんが実は元々は木でした。人間など影も形も無かった、恐竜が支配するジュラ紀の地球。松や柏の流木が堆積して化石となったものがジェットなのです。化石といってもその起源は木である為とても軽く、琥珀に次ぐくらいの軽さです。古写真を見るとよく分かるのですが19世紀のイギリスでは上流階級の女性はサイズやデザインの異なる大振りなジェットのネックレスを幾重にも重ね、その上でブローチやブレスレットまで身に纏っていました。軽いからこそ身体に負担無くいくつも身に纏うことができたのです。

人間とジェットとの関わりはとても古く、1万年前の石器時代の遺跡からも装飾品として発見されています。硬度が低いため加工しやすかったこともあるのでしょう。磨くと暖かみのある漆黒の輝きを放ちます。色合いは正に黒一色なのですが冷たいような、怖いような感じは全く無く、落ち着いて不思議なくらい穏やかです。そして恐らく磨き上げている時に発見したのだと思われますが、摩擦させると琥珀と同じように静電気を帯びます。この帯電の特性に古代の人々は呪術的な力を感じたのでしょう。ジェットの装飾品は魔除のお守りとして使われていたと考えられています。

古代ローマの時代は「黒い琥珀」と呼ばれて珍重され、中世の時代は聖像や十字架用として教会御用達となったジェットがモーニングジュエリーとして隆盛を極めるようになったのは19世紀になってからのことです。1861年ヴィクトリア女王の最愛の夫であるアルバート公がお亡くなりになります。未亡人となり悲嘆に暮れた女王は愛するアルバート公を偲んで永きにわたって喪に服しました。その年数は実に25年にもなり、常に喪服を着て生活するようになったヴィクトリア女王は喪服に着けられる装身具としてジェットを定め、女官や謁見する女性にも同じことを求めたのです。またヴィクトリア女王御一家は家庭生活におけるより良きお手本とされていたため、亡き人を偲んで喪に服すことは美徳であるということが当時の社会の隅々にまで拡がり、人々はこぞってモーニングジュエリーとしてのジェットを求めるようになったのです。

永く喪に服していた時代もやがて女王即位50年の式典を皮切りに喪が明け出すと人々は今度は明るく華やいだジュエリーを求めるようになり、ジェットは急激に衰退していくことになります。良質なジェットの産地として有名だったウイットビー(イギリス北東部)をはじめヨーロッパ各地の鉱山も次々と閉山し、20世紀の後半に中国産のものが出回るようになるまでジェットはほとんどアンティークだけの存在だったのです。

お金を出せば現代の品を手に入れることはできます。でもそこには何もありません。歴史も、人の思いも。アンティークのジェットはかつてヨーロッパで誰かが大切な人を偲んで身に纏っていた漆黒のジュエリーです。今の世であるならばモーニングジュエリーの正装としてだけでなく、その混じりっけの無い純粋な黒をカジュアルにも華やいでも活かすことができます。でも時々は、100年以上昔の出会うことの無かった人たちに思いをはせてみてくださいね。きっとどこかでよろこんでくれることでしょう。


アンティークのジェットネックレス

イギリス、1870年頃


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